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    ローレンツのハト

    <序章  ローレンツのハト>

     深い緑に沈んだ肌合いの砲身を、真っ青な空に佇立させ、自衛隊の戦車が並んでいた。車体の幅が3mはあろうかと思う、狭い一般道を走れば、白いガードレールをアメのように曲げ、黄色い対向車用のミラーをなぎ倒していくだろう。戦車の放列が並ぶ下で自衛隊員が談笑している。緊迫感はない。和光市にある陸上自衛隊の広報センターで息子のHiroはプレーリードックのようにちょこんと頭をもたげたかと思うと、戦車を覗き込み、見入っていた。

     前回、ブログを書いてから随分期間が空いてしまった。兵器オタクの息子に強引に連れられて陸上自衛隊にやってきた父親が、「ローレンツのハト」について思いを巡らす文章を書き進めている内に「こりゃ終わんねーし、重くなるな」と思った。

    「ある種類の動物がその進化の歩みのうちに、一撃で仲間を殺せるほどの武器を発達させたとする。そうなったときその動物は、武器の進化と平行して、種の存続をおびやかしかねないその武器の使用を妨げるような社会的抑制をも発達させなければならなかった」

     刷り込みの研究で知られるコンラート・ローレンツが「ソロモンの指輪」でオオカミの闘争を例示して社会的抑制力について語っている。

    「年長のオオカミは、そのおそろしい口を若いほうの首すじすれすれに近づけている。そして若い方は、頭を垂れ、体の急所中の急所である首すじを、まったく無防備に敵をさらしているのだ。皮膚一枚をへだてて太い静脈の走っているうなじから、わずか3センチもはなれぬところには、だらりとたれた舌の間に敵の牙が光っている。(中略)だが、勝った方のオオカミは、この状況のもとでは、まずけっして噛みつくことはない。見ていればわかるとおり、彼は噛みつきたいのだが、それができないのだ。」

     この抑制は、降伏者の方が「服従の姿勢」をとっているだけしか続かないが、種の存続を脅かす殺戮を未然に防いでいる。

    「自分の身体とは無関係に発達した武器を持つ動物が、たった一ついる。したがってこの動物が生まれつき持っている種特有の行動様式はこの武器の使い方をまるで知らない。武器相応に強力な抑制は用意されていないのだ。この動物は人間である。」

     それでは自分の持つ武器に対する抑止力が欠落した動物がどういう行動を起こすというのだろう。
     ローレンツはアフリカ産のジュヅカケバトの雌とヨーロッパキジバト雄との交雑種品種を行うために広い籠の中に入れて用を足すために2、3日留守にしている間に事件は起きた。

    「キジバトは籠の一隅の床に倒れていた。その後頭部と首の後ろ側、さらに背中じゅうが、尾の付け根にいたるまで羽毛をむしりとられて丸坊主にされていたばかりでなく、一面に皮をむかれていた。この赤裸の傷口のまんなかに、もう一羽の平和のハトが『踏みにじられた』相手の傷をなおもたえまなくつつきまわしていた。倒れているハトが最後の力を振り絞って逃げ出そうとおきるやいなや、ジュズカケバトはすぐに押し倒し、やわらかいはずの翼で相手を床に打ちのめす。そして再び冷酷きわまる、いびり殺しの作業にとりかかる」

    ローレンツのハト

     争いに負けたハトは、広い自然界の場合、逃走することで悲劇を回避し自己防衛をおこなうことができる。ただ、ストレスがもとで集団内に争いが生じ、しかも弱者に逃げ場がないような時こういう悲劇が発生してしまう。
     世界の至る所で、子供達の学校というテリトリの中で、家庭の中にも、「ローレンツのハト」が存在している。ちゃんと書いてみたい題材だったが、そんな話をブログに書いてもしょうがなし、書くのがシンドイなと思ってブログの掲載をやめた。

     ところで、BABYMETALに「イジメ、ダメ、ゼッタイ」という歌がある。最初聞いた時はストレートすぎる歌詞にちょっと引いてしまった。「ヘドバンギャー! !」は中元すす香(SU-METAL)の15の夜に痺れて注目していたのだが、MCがなく紙芝居仕立てで、なんとなくヤラサレ感があった。
     だが、ライブをやる中でどんどん3人が成長して楽曲もファンと共に成長してく様は驚異的でさえあった。バックバンドもカラオケから骨バンド、カミバンドへと分厚くなっていく。中元すす香の透き通って伸びやかな声、水野 由結(YUIMETAL)、菊地最愛(MOAMETAL)のハッチャけたダンス、武道館、LONDON公演のライブビューイング、サマソニに行ったがどんどんよくなっているように思える。特にロンドン公演は現地ファンの盛り上がりがすごく、ここまで世界を巻き込んでいるのか驚いた。15才の女の子達の可能性の発露に圧倒されたのだ。
     ロンドンのSonisphereフェス7万人ともいわれる観客の前で不適に笑ってみせた中元すす香には驚かされた。特に印象に残っているのはロンドン公演のライブビューイングで前の席の中学生と思える女の子が興奮して、来てよかったと何度も繰り返し、カッコいいと目を輝かせ泣いていた姿だ。オッサン共が騒いでいるだけではなく、同世代の女の子からも既に憧れる存在として彼女達は君臨しているのだ。

    Babymetal_-_Giles_Smith.jpg

     田舎の炭鉱町で育った私は、15才の頃、何をやっていたのだろう。一番の思い出は学芸会のクラス対抗の芝居の脚本・演出をやったことだ。中学1、2年の頃は芥川竜之介の小説を原作にして芝居を作って好評だった。図にのった私は芝居をやるんなら、やっぱりオリジナルじゃないとつまらんと「悪政」という芝居の脚本を書き、クラス全員を出演させて七転八倒した記憶がある。

     江戸時代の農民一揆の話だ。
     税の取立てが厳しく生活に喘ぐ農民達、容赦なく取り立てようとする下っ端の武士達、「こちとらだって内職で大変なんだ」とぼやく。そこに現れたのが水戸黄門に扮した殿様だ。水戸黄門漫遊記の熱狂的なファンである藩主が自分も善政をしてやろうと嫌がる部下に角さん助さんの扮装をさせて、密かに領地を見回っている。教科書とした漫遊記の通りにやろうとするがなかなかうまくいかない。やっと、農民を苦しませているらしい現場を押さえた藩主は意気揚々と印籠を取り出し平服させる。
     ご満悦の殿様の前で土下座していた下級武士達は、どうせ死ぬんならと、農民に味方するんだと殿様に切りつける。あわてて教科書の漫遊記を調べ出す殿様達を血祭りにあげてしまう。こんな奴らが威張ってるから駄目なんだと農民達に一揆を促す。
     ところが、「お前のせいで父ちゃんは首をつったんだ」という子供の声でお前らのことなんか信用できるかと下級武士達は農民達に殴り殺されてしまう。気勢を上げる農民達に一発の銃声が鳴り響く。
     いつのまにか銃を持った藩兵に農民達は包囲されていたのだ。
     (暗転)
     舞台で子供達が遊んでいる。子供達は印籠を見つけて印籠ごっこを始める。そこにナレーションが流れる。
    「藩主病没と幕府に届け出、徳川家の血筋を養子に迎えることで藩の重役達はお家安泰を図った。
     謀反を起こした武士達は閉門。農民達は代わりに来た下級武士達に虐げらる生活が続いた。
     そして、何事もなく悪政は続いたとさ」
     そんな芝居だったと思う。小学校の夏休みの自由研究で10m以上ある日本史の年表を作ったことがあって政権の勃興期で新しい制作を次々と打ち出す期間は意外に短く、腐敗、停滞、混乱の時期の方がずっと長いんだと実感した。政治って実は悪政は常態なんだと善政が奇跡なんじゃないかと子供心に思ったのがモティーフだったのかもしれない。
     芝居を見ていた生徒達には結構受けた。殿様達が切られた時に、血の代わりに何メートルもある赤い布を腹からへろへろ出したりするところとか爆笑をとった。ド素人のクラスメートに台詞を覚えてもらうのは大変と台詞を減らし、アクションシーンを重点においた。これで芥川を超えたと本気で思っていた私は、クラス対抗で一番受けていたこともあり、絶対1位だと思っていた。
     結果は教師からテレビドラマのマネばかりしている芝居があったと酷評され何の賞もとれなかった。それまで作文とか絵とか、何か作れば賞状をもらうのが当たり前だった私は正直へこんだのを覚えている。
     水戸黄門やドリフターズぐらいしか見たことがなかった中学生が作った芝居にしては図式的ではあるが、結構よくできていたと思う。自信作だっただけに二度と芝居なんかやるもんかと15才の私は思った。結局、大学に入ってから性懲りもなく映画をまた作ることになるのだが。15歳という年齢は何もできないかもしれないが、ひょっとすると輝ける未来を作る原動力になるか時期なのかもしれない。丁度、私の息子も15才でもあり。そうした子供達に大人ができることはなんだろうとか最近思う。

     15才頃の子供の成長というものを書いてみたい。
     青の子と呼ばれ、ももいろクローバーというアイドルグループを15才の時に脱退し女優への道を選択した早見あかりという女の子がいた。紅白、そして国立を目指したももクロ、そのももクロを1ファンとして応援を続けながら、大学進学を止め、女優業に専念して、やっと今年、映画やテレビの主演、NHKの朝ドラの出演と女優としてブレークし始めた19才の早あかり。

    早見とももクロ

     調べ始めると、ももクロの資料が膨大にある。特に動画が膨大でライブのDVDだけで1年に5本以上出し、毎週一回あるももクロChanという看板組だけで3年分(150本)以上あって、まだ全部見終わっていない。どう整理していいか迷っている内に2万字以上の記事がたまってしまった。ももクロはアイドルグループという枠ではとらえきれない魅力がある。ももクロの黄色担当で、つるんとしたゆで卵に涼やかな眼を乗っけたような玉井詩織はももクロのことをこう言って大人たちを挑発する。

    玉井「ロックも演歌もパンクもメタルも混じったのがアイドルだし、その全てを超えたものがももクロだと思うので」

    38d31231-s.jpg

    次回から早見あかりとももクロについて書いていきたいと思う。

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    2014.09.01 | コメント(0) | トラックバック(0) | 雑感

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