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    早見あかりとももいろクローバー(3)

    <題3章 ピリオドの向こう側へ>

     「小っこいな」と川上は最初に有安を見た時思った。石丸電機のスタ☆フェスのイベントで有安の加入発表を行うことになったが、会場に裏口がなく正面からしか有安を運べない。アンコールまでバレないように有安をダンボール箱に入れて台車で「荷物通ります」と言いながら川上は有安を運んだ。暗転しアンコールに「ももいろパンチ」のイントロが流れ、有安は高城と同じ命ポーズで正面を向き6人で歌った。曲終わりの整列点呼で、一人多いよーっていう流れで有安は自己紹介を行った。

    有安「昨日スタ☆フェスに来て下さった方~、突然驚かせてしまい、ごめんなさい。
       実は、みんなを驚かせるため・・・ダンボールに入っての会場入りでした。
       真っ暗で少し怖いよーな~、サウナのように暑いよーな~、
       でも、普段なかなか・・・やる機会のない体験で((笑
       ちょっぴり楽しくてドキドキでした。そして~初のももクロステージ
       実は、アンコール出て行く前は緊張で押し潰されそうで・・・
       けど、みんな凄く盛り上げてくれて最高にHappyな時間を過ごせました」
                                          (2009-07-26 21:00)

     有安はCDの発売延期によってツアーの最後に参加し自分の歌唱パートがない「ももいろパンチ」を歌うことになった。一曲ずつ歌い踊れる曲を増やしていったが、ファンの中には有安の参加に不満を持つものもいて、有安とだけ握手をしないファンもいた。今ももクロは大事な時期なのに何故メンバーを追加するのかと川上に詰め寄る熱いファンもいた。険悪な雰囲気を「もーもックロ!」、「もーもックロ」と周りのファンが掛け声をあげることで事なきを得た。川上にとって有安はももいろクローバーという画を完成させるにはどうしても必要なメンバーだと確信していたし、ファンにもそう説明した。

    早見「杏果が入ってくるって聞いた時にEXILEのバックやってた子がくるって聞いて、スゴイ子がくるんだろうなと思ってたら本当にスゴクて、ももクロ負けちゃうって思った!(杏果が)ももクロに入るんだけど、その一人が入ることによって、他の今までのがグダグダに見えてくるっていうか、こりゃー頑張らなきゃいけんという、スゴい杏果に影響された部分が、みんな強いと思う。杏果が入ってからダンスが激しくなって、今のももクロらしさ、ももクロZらしさっていうのは、多分、杏果が入ってきたとこらへんからできた」

    杏果とあかりん

    早見「杏果が踊ってる所をみると、私は自分の踊りがドスンドスン見えるんですよ。だから、こんなに軽快にキレッキレッにダンスを踊れるんだろうって思うし」

    有安がももクロに加入した当初苦手だったのは百田だった。有安と全く違う百田の異様に高いテンションに最初ついていけなかったと語っている。すぐに仲良くなったのは玉井で何かと面倒をみてくれた。早見は有安が持っていない身長、美貌、トークのうまさを全て持っているように有安には思えた。そして、写メを撮ろうよと気軽に言えない雰囲気を早見に感じていた。

    有安「あかりんは~みんな知ってのとおり、何をしても、何を着ても、いと美しゅーて、
    それに…頭もキレる。ボーッとしてる時も寝てる時もまぢ惚れるーッ、いゃぁ~あかりんみたいなアネキ…真剣ほしいんだけど!!!
    てか、、おない歳、、、しかも、産まれた日…2日違いっ(’’;)コレって信じられる(* *;)??!」
                                            (2009-09-27)

     最初のツアーが終わった頃、ファンとメンバーとの距離は限りなく近かった。「ももいろパンチ」のツアーが終わった後、川上は活動拠点を秋葉原UDXシアター移した。AKB48劇場の真後ろにあるビルに腰を落ち着けた。やはり定常的に公演できる劇場が欲しかったし、AKB48の客も引っ張れるし一石二鳥だったと思ったのかもしれない。第2弾シングル「未来へ進め!」の先行ツアー『新秋ジャイアントシリーズ』も殆どUDXシアターや東京近辺の石丸電機等でやっている。インディーズデビュー(ももいろパンチ)で全国を回ったのはいいがCD予約券は地方では殆ど売れなかった。電気屋の店頭でやっているアイドルグループを見物してもCDを購入する客は殆どいない、ツアーについてきた東京近郊のファンによる売上が殆どだった。UDXシアターは会場費が必要だったためイベント券として千円とるようになる。あくまでもイベントであるため歌だけではなく色んな企画を次々と繰り出した。その企画の主体となったのは早見だった。ももクロのファンだったら喜びそうという企画を川上が運転する帰宅途中の車中で毎回ひねくり出していた。

    早見「基本的に考えることが好きだから、握手会だけだとマンネリ化してきたからっていう企画会議を、いつも帰りの車の中でしてたんですよ。昔からやりたくないことを言っちゃうの、また、言っちまった、やっちまったみたいな、そういうところでの表現力ないのに思いついちゃうの、メンバーにも怒られてたけど」

    早見ピエロ

    早見「くだらないことばっかポンポン思いつくの。車で送ってもらってる時、二人で考えてるわけマネージャーと、帰り道全然思い浮かばないの、で、家に着く瞬間みたいなとこで、ハッとすごい思いつくの、で、絵本書くとか、絵本読むとか、もうすごい面倒くさがりやじゃん、あかり、大変じゃん、絵本書くなんて、自分が一番苦手なものがでちゃうの、似顔絵とか、塗り絵つくろうとか、パッと思いうかんで言うじゃん。そしたらいいねって。秋葉原UDXでそういう企画ばっかやってたじゃん。そういうのは私だけ、あのくだらない企画」
     早見がくだらないという企画、例えば塗り絵の企画、ももクロの塗り絵の一か所一部分の色を塗る時間だけ会話ができ徐々に塗り絵が完成する企画だったが、空が一番広いので皆、空を指定した。空を塗ると5分くらいお喋りできる。翌日から空禁止とアナウンスされた。少し凝った企画だと「校則違反09~ちょっと大人になっちゃったんじゃないチェキな!!」ももクロのメンバーがホワイトデーに男装の学ラン姿のコスプレで登場、不良っぽい口調で『来る者は拒まず、去る者は追わず。そんなヤツは東京ビッグサイトでも××(アイドルのイベントやってる場所)にでも行きやがれ!』と登場で決め、自己紹介も百田は『えくぼとケンカは江戸の花』、佐々木は『オレに触れるとヤケドするぜ』とタンカを切る。チョキ会の後に「先公にはひみつだぜ!なっ直筆お手紙」が指名メンバーからもらえるという企画。手紙もわざわざ教室で破いたようにノートの切れっ端に書いてある。こんな感じの手紙だ。『君の愛でマシュマロのよーにオレのハートを包み込んでくれッ by有安』
    CD1枚購入でメンバーとチョキを撮って手紙をもらえるんだからファンにはたまらない企画だった。

     秋葉原UDXシアターは基本映画館のためステージが低く全席指定で、客席も交互に設置され高低差が有って座ってみる分には見易い会場だ。ただステージと客席の間が狭く、最前列の客の膝に足が当たって「ヤベッ」と玉井が舌を出すぐらいの近さだった。この頃はメンバーの家族も毎日のようにきていた。毎回来るファンは100人くらいなのでいつのまにかメンバーと家族はファンの名前と推しを全部知っていた。一度も握手したことのない玉井から自分の名前を呼ばれてびっくりするファンもいた。そういう時の玉井は「私はなんでも知ってる」というお得意の口癖で自慢した。
     UDXでは毎回席を抽選で決めていた。ももクロの匂いがすると最前列はプレミアがつくほど人気が高かった。甘い綿あめと、甘酸っぱいイチゴの香りが混ざった匂いボディファンタジー・コットンキャンディ、千円もしない中学生達が好んでつけるボディ・フレグランスだ。エレベータにも時々ももクロの残り香があると、さっきまでいたのかと想像するだけでファンは嬉しかった。秋葉原UDXシアターはスタッフ用のトイレがなく、次のイベントのための行列を作っている横をメンバー6人でトイレに行っていた。さすがに一人でいくのは厭だったのだろう。終わったら『お疲れ様でーす』と言って手を振って戻ってくる。ファンからすればアイドルもトイレに行くんだという軽いカルチャーショックがあったという。そうした秋葉原UDXのイベントの白眉は『チャンピオンカーニバル5DAYS』と題された9月の5連休をフルに使ったイベントだ。1日6試合(チャンピオンカーニバルに因んで各公演は第○試合でカウントされる)を朝10:30から21:00まで連続で行った。ももクロ券というCDの予約券が必要な無料イベント(チョキ撮影、握手会)と有料(千円)ライブとの組み合わせだった。「ももいろ万丈」という「波乱万丈」を模してメンバー幼少期の写真を上映、ライブの曲数は5曲だが毎回セトリを替えて飽きさせないようにし、イベントもコスプレや糸電話等早見が思いついた企画をやった。ファンは朝から晩まで一日中UDXにいて毎日通ったという。5DAYSの2日目にメンバーのイメージカラーと衣装が発表された。百田:赤、早見:青、高城:紫、玉井:黄、佐々木:ピンク、有安:緑という現在も続くメンバーのイメージカラーが発表された。この日の3試合目のトークはトークは会場に置かれた質問BOXポストからの質問にメンバーが答えるというものだった。

    <質問>夏休みをどうすごしたか?
     早見が夏休みに百田の実家に遊びに来た。早見が来る一週間前に玉井も百田家へ遊びに来たが「詩織ちゃんとは大違いだね」と百田の兄弟が口を揃えて早見が誉めていたという。早見が大人過ぎたのか、玉井が子供すぎたのかどちらかはわからない。田舎の男の子達にとって早見は衝撃的だったようだ。

    <質問>好きな作物は何ですか?
    有安「作物は何ですか?作る物ですよね…(沈黙)ミシン!」
    レコーディング場所でも勉強していた有安が「吾輩は猫である」を「ごはいはねこである」と読んでいた事件等、有安大暴露大会に発展し、学校の勉強はできても一般常識のないおバカというイメージが定着した。

    <質問>タイムマシンで未来へ行けるとしたら何年後で何を見たい?
    早見「何年後になるか分からないけど、メンバーそれぞれが個人ではモデル・役者・アーティストとして活動し、6人揃ったらももいろクローバーとなる、今のSMAPのような活躍をしている自分達を見たい。」
    玉井「22世紀に行ってドラえもんに会いたい」
    百田「ももいろクローバーの公式目標である2010年の紅白出場を見たい」
    佐々木「何年後か分からないけど、ももクロでカウントダウンライブをやっているのを見たい」
    有安「来年春に高校生になった自分を見たい。早く今の受験のプレッシャーから解放されたい」
    高城「自分は100歳越えるまで長生きするけど、97歳の時に何かが起きる。それを確かめたい」
    早見だけが具体的なももクロの将来のビジョンを持っていたのがわかる。このビジョンに沿ってももクロはブレーク後も実現に向けて動き出しているようにみえる。ももクロをどういうグループにしていくかという早見のビジョンは20才までにトップタレントにするという川上と同じだったのではないだろうか。

    学ランコスプレ

     5DAYSは朝10:30から夜9:00まで切れまなくイベントが5日間続く、その過酷さが逆にメンバーとファンと気持ちを高めていった。いつのまにか客同士も顔なじみになり4日目ぐらいで「あっ、おはようございます」と挨拶するようになった。朝から入場の列に並び夜次の日のイベントが発表されたものをメモして帰る。その繰り返しでUDXに泊まり込みたいと思うファンも多くいた。メンバーとファンが一緒に合宿か修学旅行にでも行っているような気持ちになった。貼りだされた5日目のイベントはラブレター大会で、優勝者には何かあると書いてある。すぐに便箋と封筒をファンは買いに走った。夜を徹してラブレターを書き翌日スタッフに手渡すし不眠不休でイベントに取り組んだ。5日目、スタッフがメンバー向けに一人だけ優勝者を決め皆の前で読み上げた。早見へのラブレターでツヨクツヨクのラップの言葉に勇気づけられたという部分を早見がラップで披露した。賞品は手垢にまみれた握手会の抽選用のボールにボールペンでメンバーのサインがやっと判読可能な感じで書いてあった。それでもファンは満足だった。
     最終日の最終回に初めてUDXシアターの172席が満杯になり立ち見まで出た。この頃のももクロの動員力ではそれが精一杯だった。普段なら仲が悪い高城推しのファン達が今日だけは共闘を組もうと一緒になって応援した。最終回で疲れがピークになりながら皆異様にテンションが高くなり会場全体の一体感が増していった。「ツヨクツヨク」を泣きながら踊るメンバーを見ながらファンは泣いた。客席からの「ガンバレー!」の声に百田が「だってみんなが泣いてるから」と言った。メンバーだけではなく客席のほとんどの人がボロボロ泣いていた。この日、ももクロのライブの原型が生まれたのかもしれない。

     ももクロの初期の握手会で一番人気がなかったのは有安と佐々木だった。一番人気は百田で夏菜子渋滞と言われる程、列が長く、高城が続き、玉井と早見が同じくらいだった。
     有安も佐々木も真面目過ぎて「ハイ」っと返事をするのが精一杯で話が面白くないと敬遠された。小学校を卒業したばかりで自分のキャラを出すのに遠慮があった佐々木彩夏、途中参加で遠慮勝ちで真面目一方の有安杏果。ヲタクのファン達が何とか握手人気が出るように二人の握手券を買って教育を始めた。佐々木は昔出演したテレビでやっていた「あーりんだよ」という決め台詞をやってくれとファンに言われても最初の頃は気難しい表情で下を向いたままだった。百田は玉井が『カナブンだよ!お尻が光るんだよ』と言って笑を取っているときも中々入り込めなかった。2,3人しか自分の席に握手しにこないのでいつも手持無沙汰だった。「私の列に人が来ないんですけど、どう思いますか?」と佐々木から握手会でやっと少し打ち解けたファンに真剣に相談することがあった。プライドの高い佐々木からの相談にびっくりしたが『ファンとの間に壁があるからもうちょっとお茶目なとこ出してみれば』と助言をしたそうだ。その後、個別握手会の列が玉井と同じぐらいになったのを見て声をかけると「すごい嬉しい」と言葉が返ってきた。その後『あーりんだよ』だけで全ての会話を締めても動じない圧倒的でお茶目なピンクのハートを持つようになるとは、誰も思っていなかった。

    握手の達人

     「ももクロ握手の達人」という同人誌を作ってファンが教育を始めた。有安の挨拶の文句がつまらないと『私は、有安杏果でありやす、ちっちゃいけれど大きな元気でありやす、みんなに笑顔を届けるでありやす』という挨拶文をファンが考えて「ももクロ握手の達人」に載せ有安に説明し今の自己紹介につながっていった。有安も歌え踊れる曲が少しずつ増えていき、握手をしなかったファンにも認められるようになった。ジャイアントシリーズも終盤となり秋も深くなった頃、秋葉原の路地裏に作られた期間限定SHOP「はるえ商店」の店頭で売り子をしていた有安に、それまで言い出しかねていたファンがようやく口をひらいた。『杏果がメンバーになってくれてホントによかった。今まで認めなくてゴメンね』、
    『もうそんなことはどうでもいいんですよ~』と有安は答えながら小さな握りこぶしのような顔をコクッと頷いてファンと一緒に泣いた。隣で玉井がニコニコしながら秋の夕暮の「はるえ商店」の二人を見ていた。
     ファンからアイドル業界や握手術等を教えられるだけでなく、早見がファンに面接のコツを伝授することもあった。リストラされて職を失くしたファンがいて、『仕事どうなりました?』みたいなことを早見が聞くと「まだなんですよ」と答えると早見が「じゃあ今、私が受験で面接の練習してるからやり方を教えてあげますよ!」と言って。「そうそう、背筋をピンと伸ばす!声をハキハキ喋る!語尾をはっきり言う!」とか彼は全部メモに取った。「えーって言わない」と早見が中学校で高校受験用に勉強したことを全て伝授した。早見の場合、高校受験だけでなくオーディションを何度も受けているので面接の対応はリアルである。早見の言いつけを守ったおかげで彼は就職が決まったそうだ。彼は今でも早見のことを恩師だと思っているという。

     「ももクロドッキドキ初体験日記」というヤマダ電気の研修を体験したビデオにももクロが出演した。川上のももクロに対する教育方針がよくわかるビデオだと思う。中学生と思わずガチで研修してくださいと川上からヤマダ電機に頼んだのではないだろうか。最初の研修は研修室で2人1組になって新製品のテレビのアピールをし、研修担当教官が合格の札を出すまで繰り返しやらせる。皆、中々合格がもらえない。やっと優等生の早見が抜け出し、結局、佐々木と玉井が最後まで残りなかなか合格にならない。佐々木は頭が真っ白で何も考えられないと言いだし涙を流す。ようやく二人共、教官から合格をもらい、教官からこの訓練の狙いを説明される。
     「誰が早く抜けるかとか誰が最後まで残るのかということは重要ではなく、指摘され、席に戻って椅子に座った時に何を考えたかが重要です。何も考えずに後ろに座ってるだけだは何も成長がありません。皆さんが社会に出た時にいろんな壁にぶつかります。嫌なこと一杯あるでしょう。その時に何も考えずに止めようと思うのか、壁にぶつかった時にこの壁を乗り越えようと思って一歩でも前に踏み出すのか。この訓練はそれを体験してもらおうということです。みんな座って色々考えて、こうしようあーしようと考えるでしょ、それが大切です」
     次の研修は二人一組で実際にヤマダ電機新橋店の店頭に立っての接客を実習する。早見と高城、玉井と佐々木、百田と有安が夫々ペアとなり、挨拶、声の大きさ、アプローチ、客への印象、商品説明、接客の終わらせ方の観点から評価する。接客中の様子は別室のモニタで接客中以外のメンバーを含めて、接客のどこに問題があるのかを具体的に教官が指摘し説明する形で研修を行う。メンバーには伝えていないが強面のお客さんのフリをする別の研修担当者を入れ、あいまいな受け答えを許さない厳しめのお客を演じてもらう。色んなお客さんの対応を見ながら別室で具体的な指摘を聞くことで次のペアの対応がどんどん良くなっていく。ただ、お客のフリをする強面の研修担当者の鋭い質問に皆タジタジだった。最後の百田・有安のペアは挨拶、声出し、お客へのアプローチは満点の評価を受ける。ところが強面の客の対応で雰囲気は一変する。客の質問はテレビを見るのに必ずアンテナを立てなければならないのか、他に方法がないのかというものだ。知らない知識を突っ込まれてタジタジとなる。自分なり受け答えしようとして、有安はアンテナは絶対必要です、アンテナがないと観れませんと力説する。客の雰囲気の変化を敏感に察した百田は正確な情報を聞きに走る。戻ってきた百田がOCN等のひかりTVに契約すればアンテナがなくてもコードをつなげばできると答える。客はその答えを聞いてアンテナが必要だと言い切った有安に詰問する。

    客「アンテナ立てなきゃ観れないって言ったでしょ!あなた言い切ったんだからね!アンテナを立てなきゃいけないって言ったんだよ、アンタは!」
    有安「申し訳ございません」(何度も頭を下げる)
    客「そういう風に説明してくれれば、そうだろう!アンテナ立てなくたって観れるわけだよ。配線で!」
    有安「はい、申し訳ございません。本当にこちらの知識不足でお客様のおっしゃる通りです。本当に申し訳ございません」
    客「だから分かんなかったら『分かんない』って言えばいいんだよ!言い切ったんだから!」

     有安は申し訳ございませんと震えながら謝まった。客が去っていくと崩れるように泣き出した。
     百田は持っていたパンフで有安の顔をすっと覆い、カメラから有安の泣き顔を隠した。そして有安を抱きかかえながら「頑張ったね」と笑顔で有安かばいながらその場を後にした。

    ヤマダ電機研修

     この時の有安への百田の対応を見れば、ももクロのリーダーはやはり百田しかいないと思えた。研修教官は現場に立ったらヤマダ電機を背負って立つ気でやらなければいけないと言ったが、百田はすでにこの時点で、ももクロを背負って立っていたし、かけがえのないリーダーだった。
    秋葉原のベルサールのステージ、「未来へ進め!」のツアーも終盤でライブに次ぐライブでヘトヘトになっていた。そんなライブ中に、玉井がマイク落とした。マイクはそのままステージの下まで転がっていった。ももクロも観客もスタッフもフリーズした。玉井はどうしていいかわからず泣き出した。玉井の表情を見た瞬間、百田は躊躇せずステージの下の奈落へ飛び降りた。マイクを拾い、笑顔で玉井に手渡して何事もなくライブを続けた。百田は、誰もが止まってしまう瞬間に動ける力を持ったリーダーだ。

    早見「最初の頃よりもね、夏菜子に頼れるっていうか、夏菜子に頼っても大丈夫みたいな感じがある。今、頼っても夏菜子は答えてくれるような感じがある。前の夏菜子だったら、あたし、あたしできないもんで終わりそうだけど、今だったら相談できるっていうか。リーダーって感じがする」
    百田「最初はほんとにね、なんであたしなんだろうって感じだったんだけど、いろんな人に頼られるっていうか、いろんなことを求めないといけなくなって、それで責任感ついてくるじゃん、そしたら、だんだん、最初、私考え過ぎだったんですよ。なんか全部まとめなきゃいけない、どうしよう、どうしようだったんだけど。あっ普通に、このキャラで、ハーイやろうみたいなノリでいいじゃんみたいな感じになってきて、普通にまとめればいいんだなって感じで、あかりんサブだし、あかりんしっかりしてるから、あたしがふざけた時はまとめてくれるし、なんか、いい感じのコンビでね、色と一緒、あたしが赤でプラス、あかりんが青でマイナス、プラスとマイナスを足してー、真逆なことが多いんだよね、あたしはすっごくポジティブなんですよ、あかりんはすごくネガティブなんです。あかりんがネガティブな時は『いいじゃん、そんなの、気にすんなよ』みたいなノリで、プラマイだー、だんだん、マネジャーさんの言ってたことがわかってきて」
    早見「嘘じゃないんだよね、最初は信じられないんだけどね」
    百田「でもね、今、すっごい楽しいし、あっリーダーで良かったなーって時があるし、他の子が、できないこともやれるときがあると思うし、でもその分ね頑張らなけゃいけないんだけど。でも、頑張ったら何かある筈だし」
    早見「リーダーが困ったら、何かお手伝いしますので、サブ、頑張ります!」
    百田「よろしく、よろしくお願いします。」
    早見「普通に楽しんで、気楽に夏菜子は、夏菜子だからね、夏菜子のままでいった方がいいと思う」
    百田「そうだね、マネージャーさんもそういってたもんね」
    早見「最初、それ言ってたよね。それが今になってわかったの、ねえー」
    百田「言ってたね(言われてたね!)、ビックリです。お互いプラマイで頑張ろうぜ」
    早見「プラマイで頑張ろうぜ!」

     ジャン・ピアジェの「三つ山の課題」という実験がある。成長過程の子供達に山が3つあるパノラマを見せ、山がいくつ見えるかを問う実験だ。
     幼稚園児はdからみたときは3つと答え、cからみたときは2つと答える。見る角度によって見える山の数が違って見えるため目の前の事象だけで判断する。例えパノラマを俯瞰的に見た後であっても、目の前の山が2つしか見えなければ、山が3つあることを理解できない。

    ピアジェ

     それが小学生になると3つと答えられるようになる俯瞰的に空間を把握する力を発達過程で獲得したからだ。成長とはこれまでと違った次元で世界を見れるようになることだ。ただ成長の過程で混乱し成績が落ちることがある。2次元の世界で正解であると信じていたことが3次元になった途端に断定できなくなる。成長は新しい環境で生きていくには必要なことだが、簡単に新しい視点を獲得できるものではない。親に反抗して親もまた一人の人間だと知るように、子供も持って初めて親の気持ちを知るように実感を伴った視点を持つのでなければ成長とはいえない。ももクロのように誰もやったことのない環境に放り込まれて成長するのは並大抵のことではない。メンバーはその壁を乗り越えるための負けん気、体力、そして助け合える仲間がいた。

     有安が握手会でダンスについて女性ファンから駄目だしを出されて泣き出したことがあった。早見が有安を抱きかかえ何か言い、有安はうなずいて握手会に戻った。後でファンが早見に何を言ったのか聞くと「ステージでは泣いていい時と悪い時があって、今は駄目な時だよ」と言ったという。有安が何故泣いていたか聞かなかったのかとファンが早見に問うと「聞いてほしいことがあるなら向こうから言ってくるから、私からは聞かない」と早見は答えた。早見にとって百田がフォローできない部分をフォローするのが自分の役割だと自覚していた。
     「未来へ進め!」のツアー中にインフルエンザが流行った。最初に早見と高城がインフルエンザで倒れた。11月1日の公演に早見は欠席とアナウンスされていた。その午後の部で1曲目のwords of mindのラップパートの時、なにやら聞き覚えのある低い声が聞こえた。メンバーを一人一人確認していっても誰もマイクを口に持っていっていない。もう一巡確認するも答えは同じ。事態が乗り込めないファンやメンバーをもてあそぶかのように上手側から漆黒のドレスを身に纏った早見が登場した。UDXシアターは座って見るのが原則だったが皆総立ちになり異様な盛り上がりをみせた。
    早見あかりIn The Place To Be!
    早見がインフルエンザために着れなかったハロウイン用の魔女のドレスを着て、ラップしながらのまさかの登場に会場は沸いた。

    あかり復活

     ファンは総立ちで早見を迎えた。そして最後に「words of mind」でお約束になっていた軍手を早見は客席に勢いよく投げた。

    早見「午前中、医者に行ったら、今日のライブOKだよって言われたからやりに来た」

     早見は何事もないように言う。早見にはこうした自己演出が似合った。この後、高城が復帰したが有安と玉井がインフルエンザで倒れた。車中泊はなくなったが日程の過酷さは相変わらずで、満身創痍のまま11月11日の「未来へ進め!」の発売日を迎えた。
     秋葉原のももクロ専用物販コーナー「はるえ商店」のイベント中にデイリーチャートの結果が発表された。マネージャーの古屋が順位の書かれた紙を持って「それでは発表しますよ!」と言っても「ちょっと待って待って!」「心の準備ができてない!」とメンバーは大騒ぎ。みながざわついてる中、いよいよ発表。
     「第6位」と発表された瞬間、メンバーも会場のファンも歓声があがり、全員で万歳三唱。会場の「はるえ商店」は秋葉原の駅前で、駅に向かう人も何事かと、この騒ぎで集まってきた。
    メンバーもみんな泣いてた。いつもクールな早見も最初は放心状態でぼーっとしていたがコメントを言ってる途中に感極まって泣き出した。この時の映像は早見脱退の「あかりんに贈る歌」の映像で使われている。
    今日は泣いてもいい時と場所なんだとばかりに有安と高城は終始号泣だった。スタッフも男泣き。泣いてるヲタが多かった。
     いきものがかりを抑えて6位、無名の新人グループとファンが一緒になってメジャーのミュージシャンに竹ヤリて突撃し続けたようなものだ。

    20091111.jpg

     宣伝費がないためCMを打てるわけではなく、2ヶ月間、ドブ板営業で彼女達が1枚1枚ファンとチェキを撮ったり、握手して手売りしてきた積み重ねがオリコンデイリー6位の成績となった。そしてウィークリーランキングは11位(15,292 枚)を勝ちとる。100枚、150枚買い支えたヲタはざらにいた。ももいろパンチの時の4倍の売上だ。
    この快進撃がメジャーデビューを呼び込んだ。川上が幾つか打診した中からユニバーサルが手を上げメジャーデビューが決定した。やはり、ウィークリーランキングは11位で売上が急激に伸びている結果がメジャーの食指を動かした。日本の場合、インディーズとメジャーの違いは日本レコード協会に加入しているかどうかの違いで流通経路が違うだけだが、それでも宣伝費が出るし、一般のCDショップにもCDが並ぶのだ。

    早見「2010年、来年、ももクロちゃんどうどうなりたいですか、リーダー」
    百田「2010年はやっぱり、紅白に出たいよね!2010年の紅白って最初からの目標だよね。最終的な目標って、最初から決まってたね。
    早見「最初から決まってたね、最初から、おっきなところが決まってて、それに向かってひとつづつのね」
    百田「それが紅白なんだよね。ももクロchanのよさをいろんな人に伝えていきたいね。
    一年の〆が紅白なんて、幸せすぎるよ。狙って行こうよ、ね、」
    早見「幸せすぎてバチがあたるかもしれないけど。まあ、大丈夫でしょう。
    神様はやさしいよ、きっと」
    百田「神様はね、越えられない壁は作らないんだよ。ねー!」
    早見「越えられる子にしか壁は与えないんだよね。だから行けます!」
    百田「2010年のももクロchanは止まりません。」
    早見「2010年も2011年も2012年も、ももクロchanは止まらない。」
    百田「みんながももクロchanはどこまで行くんだみたいな所まで、行っちゃおうね、走り続けて、いきたいね、楽しみ」
    早見「楽しみ」
                               「早見あかりのわかーんない#2」  (2009/12/21)

    「銀河鉄道の夜」のジョバンニとカンパネラの二人が『どこまでも どこまでも 一緒に行こう』という台詞のように二人はももクロの未来を宣言する。スターダストの事務所の一室で百人に満たない視聴者に向けてももクロラジオ局からの発信。悪い予感のかけらもないような2009年のももクロは終わりを迎え2010年が幕を開けた。


    サヨナラドラえもん

     川上は「行くぜっ!怪盗少女」をメジャーデビューのメイン曲として推したがユニバーサル側が難色を示し長い話合いを持つことになった。

    川上「僕がもともと女優のマネージャーだったからなのだと思いますが、『楽曲を選ぶ基準はこうなんですよ』『宣伝はこうするものですよ』と音楽界の常識を聞かされることが多かった。そういう意見を聞くと、つい『じゃ、あなたたちだけで売れるものを作ればいいじゃないですか』と思ってしまいます。まあ、僕は人見知りなので、口には出さないで腹の中で思っているんですけど」

     ユニバーサル側からするとCD発売の2か月前からツアーをやるなど、音楽を事を何も知らない素人として見下していたのだろう。認知度も金もないももクロはそれしか取るべき方法がなかったのだが。ユニバーサルが言うような音楽の王道に則って歌やダンスだけで他のアイドルと勝負しても勝てないと川上は思っていた。普通ならB面にしてしまうメンバー紹介曲の「行くぜっ!怪盗少女」。転調の多い軽快なメロディーにのせてメンバーの個性を引き出し、ももクロの魅力をあますことなく伝えていた。これこそももクロの代表曲になると川上は最初に聞いた時から惚れ込んでいた。
     メジャーデビューに向けてユニバーサルと川上との相克が続く。ユニバーサルからすれば音楽のことを何も知らない女優事務所のマネージャーとしか思っていなかったかもしれないが、川上は自分の思いを伝えられるレコード会社のパートナーがほしかった。
     水面下で知り合いのマネージャーの縁でキングレコードの宮本純之介と接触しこの人とならもっと自由にCDが作れると思った。四半期に一回必ずCDを出すことを強制されることもなく、ももクロ側の特色を加味して一緒に楽曲を作れそうだった。そして、怪盗少女のメジャーデビュー発表イベントに川上は宮本を招いた。敵地のユニバーサルのメジャーデビュー発表記者会見に宮本を呼んだのだ。メジャーデビューする前にキングレコードへの移籍を決めていた。川上は一度信用すると方向性だけ伝えて自由にやらせた。ももクロを支える才能あるスタッフがその後も集まっていき分厚い「チームももクロ」を作っていくことになる。
     「行くぜっ!怪盗少女」をメジャーデビュー曲にするために上司の藤下リュージの力を借りたにせよ、粘り強く説得し、プロレスの記者会見を模したメジャーデビューの記者会見のセッティングをした。意地もあったのだろう川上は自分の意見を全て押し通した。メジャーデビューの調印式にメンバーの体重測定をやるという茶番もやった。メジャーデビューするにはアイドルの基準の体重が必要という無茶苦茶な設定で報道陣がいる中で公開体重測定を行った。早見は1月からダイエットを始め楽々と基準をクリアしたが、高城が0.8Kオーバーで仮調印という顛末となった。
     大人たちの裏事情とは無関係にメジャーデビューの関係で1月、2月は殆どライブがなく早見、百田、有安らは高校受験に専念できた。百田は東京の高校を受験することに決めた。ツアー等で平日のイベントに参加するとなると必然的に都内の高校を選択せざるを得なかった。メジャーデビューも決まり静岡の親許から通う前提で、ももクロの活動に専念できる環境を考えたのだろう。
    ももいろクローバー・メジャーツアー2010 春の最強タッグ決定戦 ~炎の約28番勝負が3月6日から「行くぜっ!怪盗少女」の発売(2010年5月5日)に向け開始した。
     3月14日のヴィーナスフォートでのライブで「ツヨクツヨク」を歌っている最中に曲が止まりスターウォーズの「帝国軍のテーマ」が鳴り響いた。ステージ上のメンバーも「何?何?」と動揺する中、再び中央ドアが開くと百田がバースデイケーキを持って来た。早見と有安へのサプライズイベントだ。皆で「ハッピバースディトゥユー」を歌う中、有安はもううれし泣きでボロボロ涙を流し、早見は嬉しすぎてキョトキョトしてしていた。
     早見サイドの最前列では、色紙に一文字ずつ書いて並べる「おめでとうあかり杏果」のボードが並び、イメージ色のサイリウムが点灯した。
     去年ケーキを持って来たのも夏菜子で、『去年もこうだったよね~』と話す。一年前の3/14「GirlsWoodstock Vol.10」のあかりの誕生日から始まった。当時、スターウォーズの帝国軍のテーマはメンバーが抜けるとか重大発表時に使用されていたので、あかりは何が起こるか不安で思い切り泣いたのを覚えているとの事。百田から「15歳の抱負は?」と振られると二人とも「こんな事なら考えておけば良かった~」と考え込む。
    有安は「高校生になるので、もう身長は伸びないと思うけど、人間として成長したい」と真面目なコメントを述べる。早見は、どさくさに紛れて「15歳になっても頑張りまーす」とさらっと流そうとしたが、玉井から「こう見えても、あかり何が起こるか心配して、しおりの手をギュって握ってたの」という暴露で一挙に会場和んだ。
    早見「クールビューティーの私がそんな事をする筈がないでしょう」

     強がりで意地っ張りのくせに怖がりで真っすぐな早見、その激しい感情の起伏を隠すのが苦手で不器用な早見がそこにいた。

     ツアーは相変わらずUDXシアターをメインにして、いつもの怒涛のスケジュールで5月5日の発売日を迎えた。ツアー終盤はメンバーの健康状態がライブのパフォーマンスにも影響を与えた。観客がもう踊らなくてもいいからといいたくなるように青白い顔をして踊った。それでも数日後の野外ライブではすさまじい回復力で元気に踊っていた。オリコンデイリーランキングを発表する「ドキドキの発表会」は172席のUDXシアターでは入りきれず応募制になった。抽選に落ちた大半のファンはロビー観戦をしながら発表を待った。メジャーデビューということで垂れ幕も立派になり、「走れ!」の途中で、サイレン、曲が止まる。紐を引くように指示があって、メンバーが紐を引く「オリコンデイリーランキング1位」の垂れ幕が下りた。早見は事前に知っていたようだがメンバーは大泣きするも、メジャーデビューということもありスチール撮影、日テレのPONとDONの取材等があり、今までのファンとスタッフだけの発表とは違ったものになった。UDXシアターは5月5日のイベントを最後に以降使用することはなくなる。ライブをやるには既にキャパが足りなくなっていた。

    デイリー1位

     5月10日石丸ソフト本店でツアーファイルナルの翌日にイベントがあった。各メンバーのパーソナルカラーのツナギ衣装で着てライブを行った。「ツヨクツヨク」の曲がいきなり止まって『今日は何の日か分かってますよね!』とスタッフが登場した。『じゃぁこれ3,2,1で広げて下さい』と、昔からデイリーの発表で使っていた馴染みのある丸めた紙を持ってきて広げた。
    『オリコンウイークリー3位』

    早見「言葉が出ない。日本で3位ってことでしょう。嬉しいです。」
    佐々木「分かんない。トップ3に入ったんですよね。凄い!凄い!。1,2,3位!(と指を折って数え直すぐらい驚いて)
    玉井「どういうことになっちゃったの?という感じ。だって番組でも10位から4位まで発表して、CM挟んでからの3位発表って位置じゃないですか」
    高城「分かんない。本当に数え切れないアーチストさんのいる中から今週私達が3位になったということでしょう。ももクロに関わった全ての人に感謝したい」
    有安「3月から全力で頑張って来ました。皆さんの応援が私の誇りです」
    百田「すごいよね、だって3位って段(表彰台)に乗れるんだよ!」

     メンバーが感謝述べてる間に、高城がほっぺをつねってもらい『夢じゃないんだ』をスタッフと何度もやっていた。「未来に進め!」までの号泣して言葉が出ない状態から次を目指す力強さがメンバーに出てきた。大人たちがデイリー1位を取らせるために必死になっている時に、メンバーはオリコンランキングがウイークリーの数字しか記録に残らないことも理解していた。

    早見「みんな、ありがとう。今日は柄にもなく語ってみたいと思います。
       3月から始まったこのツアー、思えばこの時はまだ中学生だった。
       学校とライブ両方が楽しくて楽しくて本当に幸せでした。
       そして高校生になり新しい生活が始まって
       不安だった……
       でも予想外に楽しいことがいっぱい!
       だけど正直、学校→ライブは辛かった時もあったな。
       みんなの顔見たらその時は元気になれたんだけどね…
       今回のツアーは絶対に休演しないって心の中で決めてたから
       休演してしまった時は本当に悔しくて…
       みんなの優しさに支えられて…
       良い人達に恵まれたなあと改めて感じることが出来ました。
       辛いこともあった。泣いたこともあった。
       だけどそれ以上に楽しかった。心のそこから笑えた。
       このツアーで関わった方、みんなに感謝の気持ちでいっぱいです。
       本当に本当にありがとうございました!
       そしてそして、ウィークリーランキング☆第3位☆
       正直まだ実感ないです。
       だってだってね~
       でもめっちゃ嬉しい。
       もっと上を目指して目標は高く頑張ります!
       ここまで読んでくれて、ありがちょーんo(><)o」  (2010-05-11 )

     ももクロが初めて、多くの人の目に触れるきっかけになったのは、2010年、5月30日に放映された、NHKの音楽番組「MUSIC JAPAN」の「アイドル大集合SP」である。この回は出演者をアイドルに絞り、AKB48、モーニング娘、スマイレージ、アイドリング!!!、東京女子流、バニラビーンズ、ももクロが出場した。この放送の影響は絶大で、これをきっかけに「アイドル戦国時代」という言葉が語られるようになる。
    ももクロはメジャーデビューしたばかりで、知名度的には出演者の中でも最低レベル。
    しかし、百田は「アイドル戦国時代に天下を取ることを目指す」とインタビューで語り番組の収録に臨んだ。
    収録日は5月17日、ちょうどももクロ結成2周年に当たっていた。代々木公園の路上ライヴから活動を始めたももクロが、2年目にしてとうとう路上から眺め見ていたNHKホールに出場を果たすことになった。ももクロは、オープニングアクトを務め、新人グループとしてメンバーの自己紹介も行った。
    ももクロは、その特徴的な自己紹介、キャッチーで転調の多い「怪盗少女」、エビ反りジャンプなどのアクロバットを取り入れたダンスで圧倒的なインパクトを残した。

    201005_MJ.jpg

     また、放送後、その動画や、エビ反りジャンプの画像がネットで広まった。渋谷HMVの副店長だった佐藤守道がMJのときの百田のエビぞりジャンプの写真と「このジャンプがアイドル史を更新する」というコピーが入ったポップを店内に飾った。佐藤はAKB48目当てでMJを見ていたら、一発目にドカンときて、これは本当にやばいなと、やんなきゃと思ったという。評判が評判をを呼び、ももクロのメンバーも川上に引率されて渋谷に見に来た。これが縁でHMV渋谷店閉鎖後に佐藤はスターダストに入ることになる。
     そして、ももクロのライブの観客数は、200人規模から1000人規模へと膨らんだ。
     MJには6万通に達したという観覧応募あった。結成2周年の記念すべきこの日を、応募に落選し客席から声援を送れないファンが仕事を終えて、とにかくNHKホールに向かった。結成2周年のお祝いの大きなホールケーキを持ちよりファンが集まった。ホール正面で会場の外から応援してるヲタは意外と少なく、10人ちょっとでケーキを囲む。きれいな色のろうそくも用意していた。赤、青、黄、緑、ピンク…5本しかない!紫がない!2周年ということで2本だけローソクを立て、火をつける。ハッピーバースデイ歌った。とても美味しいケーキだった。ハッピーバースデイももクロちゃん!2周年おめでとう!ささやかながら、記念日当日に晴れ舞台(の外)で、思い出の場所で、その場にいたファンと一緒に、お祝いができたと思うだけで、皆幸せな気持ちになった。

    「ももクロちゃん来る。ここ来る。ももクロここ来る。」
    「え???」
    「ちょうど出番終わったとこでそこ通って、『そこに他にもファンがいる』と声かけたら来てくれることになった。しおりんが『そっち行きます』って言って川上さんが『じゃあ行きましょう!』って言ったから間違いない!」

     ファンに動揺が走った。本当にくるのか、期待と不安の中でももクロの訪れを待った。

     NHKホールの本館から微かに人の動きがあった。女の子が何人か動いている。ももクロのメンバーじゃないか?こちらに向かっている。こっちを向かって歩いてくる。完全にももクロだ。だんだん早足になって、近づいてきた。走り始めた!6人並んで、こっちに向かって走ってきた。6人並んでまっすぐこちらを見て走ってくる!彼らにとって信じられない光景が迫ってきた。6人並んでまっすぐ走ってくる光景が美しい。みんな嬉しそうに走って、みるみる近づいてくる。最高の笑顔で彼らの目の前に立ち止まる。
     ももいろクローバーだ!
     早見が騒がないように指で「シー」っとやったが、MJの出演で高揚したももクロのメンバーが弾けるようにはしゃいだ。晴れの大舞台を終えて、晴れがましく、清々しく、とても素敵な表情をしていた。玉井、百田、早見が制服で、高城、、有安、佐々木が私服だった。
     近くに外人の女の子がいて、しゃべりかけてきたので、玉井はすかさず「We are Momoiro Clover! Japanese famous idol!」と決めていた。
     百田が「NHKホールには紅白で戻ってきます!」と宣言した。
     「おめでとう」、「お疲れ様」、「ありがとう」、「また一緒に、紅白でここに来ようね!」言葉が交錯し、やがて、ももクロのメンバーが去っていく時が来た。
     夢見心地で見送っていたファンの50mほど先の距離で止まる。ももクロのメンバーが立ち止まり振り返った。

    百田「以上、わたしたち!週末ヒロイン、ももいろクローバーでした!」

     会っていた時は殆ど喋れていなかったファンもこの時ばかりは思いっきり『ありがとう!』と叫んだ。

     実際の記念日から一カ月遅れてSHIBUYA BOXX(キャパ280名)で2周年記念ライブ「最強はももクロがキメル!梅雨。」を行った。1日2回興行だが、チケットの入手が困難になり一部高騰したようだ。メジャーデビューを契機にファン層の入れ替わりが見られた。新しいファンが急激に増えるに従い握手会の時間も短くなり、アイドルヲタと言われる人達が他の新規のアイドルに流れ始めていた。そんなファンをライブ中のトークで早見が客をいじった。

    早見「他のアイドルさんの現場に遊びに行きましたら、いつもうちの現場で見る方たちが、あれ、あれ、思い当たる節がある人がいらっしゃるようで、うちで現場に遊びにきている方たちがアイドル界を盛り上げようとキラキラした笑顔で応援していらっしゃいました。」
    佐々木「頭の下がるおもいです」
    百田「わかってるよ。みんなのこと。ちゃんとわかってるよ。みんな、この手話さないで」
    早見「ファンの皆さん一緒に行きましょう。ピリオドの向こう側!」
    百田「私たち今会えるアイドル!DD大歓迎のももいろクローバーです」と声を合わせた。

    20100626_2周年

     ももクロ2周年記念ライブが終わった後のブログで早見はこう言っている。

    早見「終わっちゃいました。二周年ライブ(^O^)/ 楽しかったね。二年前ー…
       今日やった渋谷BOXXの前にある代々木公園で路上ライブをしてるももくろ見に行ってたな!
       ファンの人の前に体育座りして見てたし(笑)
       そのときから応援してくれてる方は知ってると思うけど…
       ビラ配りで、ももくろのメンバー足りないとき…
       あかりがお手伝い行ったりーw
       たまに踊っちゃったり。
       その時は自分がももくろになるなんて全然思ってなかったー。
       後から聞いた話によるとマネージャーさんにはその気があったらしい。
       知らなかったわ(ω)!
       なんかラジカセ1つでやってたグループがここまで素敵な二周年を迎えることができて
       あかり嬉しす、なんかお母さんの気分(笑)
       とにかく今日はいっぱい踊ったし~ぐっすり寝れそう。
       みんなも早く寝るんだよ!
      じゃあ最後に…今日は本当にありがとうね!!」  (2010/6/26) 

     早見はこの後のブログでもファンとしてももクロを体育座りで見ていた自分を何度も思い返す。まるでそこが自分の原点であるかのように。

    早見「最初はただただ必死だったんですけど、ももクロのライブとかでも楽しむ余裕がほんのちょっとだけ出てきて、周りのことを見られるようになって、自分が思っているアイドル像みたいなものから、自分が全然かけ離れているような気がし始めたんです。他のみんなはステージ上ですごくかわいい女の子でやっているのに、私は自分の思っているアイドルになれなかった。これでいいのかな、私いなかった方がいいんじゃないかなって、少しずつ思い始めたんです。
     自分がアイドルっぽくないな、向いてないなっていう思いは、最初からずっとありました。でも活動自体は楽しんでやっていて、本当に、いろんなことの積み重ねだったと思うんですよ。自分にはもっと違う道があるんじゃないかなって、そう思い始めたんです。」

     早見と百田はお互いの個人のブログでちょっとした続き物の記事を作って交換することがあった。携帯に撮りためた写真を掘り起し、6月27日にブログを立てつつけにアップした。

    早見「衣装のせい?
        ね、リーダー」

    早見2010627-1



    早見「わかってるよ、
        ダメなことくらい」

    早見2010627-2



    早見「でも、やっぱだめだよ
        その手…
        離したくない」

    早見2010627-3



    百田「ねぇ…
        あかりん…
        この手離さないで」

    この手離さないで



    早見「そうそう七夕といえば
        願いが叶う日だよ
        みんな何かお願いした?
        あかりはね~~
        今の幸せがずっと続きますようにって、お願いした
        ライブも学校もぜーんぶ楽しいから
        これがずっとずっと続くといーなって!
        きっと大丈夫だよね」2010/7/7

    早見が脱退宣言する日まで後半年に迫っていた。早見にとって暑い夏が始まろうとしていた。

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    2015.01.25 | コメント(0) | トラックバック(0) | ももクロ

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