fc2ブログ

    Pefume『ポリリズム』

     リズムが複雑に重なるポリリズムの間奏部を変えてほしいとアミューズから注文が入った時、中田ヤスタカが
    「僕が行きます。行って説明します」と言ってアミューズに乗り込んできた。
     Perfumeのマネージャー山本史朗(もっさん)はクールなイメージの中田ヤスタカの思いがけない反応と熱意に驚いた。
     カッコよすぎるから一般に流せないという製作側に対して、滅多に感情を表出しない中田ヤスタカが熱く語った。
    「今の若い世代はどんどん新しいものを取り入れるから、若い子の音を聴いてそれに合わせるのでは遅い。それよりさらに先のことを考えて作るくらいでないとダメだ」
     それでもラジオでは長すぎてちょっと流せないともっさんが言うと
    「大丈夫です。そこをカットしたラジオエディトバージョンを作ります。ただ、一曲目はこれでいきたいんです」
    「でもこの間奏はちょっと長すぎませんか」
    「これは間奏じゃないです。歌なんです」

     そう、この間奏部分こそポリリズムの主旋律であり歌なのだ。
     多様なリズムが同時進行し最小公倍数で交わるポリリズム。
     それぞれに独立して互いに融け合うことのないあまたの声と意識であるポリフォニーのように多様で独立したリズムがその鼓動を響かせ、いつか巡り合う奇跡。

     間奏部分で『ポリリズム』という声を繰り返した後『リズム』という声に移る。ベースとの関係が,3拍2連となり、『ループ』で3拍2連となったあと、『プ』の部分だけリピートしていく。それが,ベースのリズムの裏に入り込み、のりの良さを生むとともに,ベースとリズムがシンクロしたことによって、解決への期待感が生まれる。

    生きたい

    そして,シンセが優しい音を鳴らしてカタルシスへといざなう。
    それぞれが違った鼓動を性格に打ち続ける限り、また巡り合うのだ。

     くり返す いつかみたいな
     あの光景が 甦るの
     くり返す このポリリズム
     あの反動が うそみたいだね
     くり返す このポリループ

     中田ヤスタカがポリリズムの鼓動を打ち始めた頃、Perfumeを形成するもう一つの鼓動を打つ者がニューヨークにいた。水野幹子、PerfumeのメンバーからMIKIKO先生と呼ばれいる女性だ。Perfume結成の頃から彼女達にダンスを教え、鍛え、振り付けを行ってきた。
     彼女はアミューズの大里会長に認められ「感性を磨いてきなさい」という大きすぎる課題を与えられ渡米していた。
    「ニューヨークでの生活は舞台をできるだけたくさん観ること。ブロードウェーはもちろん、自主公演やアフリカンスタジオのパフォーマンスとかまで、好き嫌い問わず、いろんな舞台を観て、そのレポートを毎月提出することが条件でした。あとは、語学学校と、ダンスレッスンに通う日々。」(MIKIKO)

     高3からダンスを始めた彼女にとって、ダンスで生きると決めた以上、高校卒業後にたった一年で教える立場の生活を始めざるを得なかった。ダンスの先生だったCHRISのチームの一員としてダンスコンテストで優勝したとしても自分の実力とはとても言えないと思っていた。CHRISと一緒にアクターズスクール広島に先生になった後も、駄目もとで応募したMAXのバックダンサーのオーディションに受かった。そこで結成されたVAXというチームで5年、アクターズの先生をしながら東京と広島を往復しながら自分のダンス磨き続けた。東京と広島の往復の旅費を考えたら持ち出しの方が多かったのは容易に想像つく。東京ではダンサーとしての仕事や、VAXでのショウタイムをやりながら、広島では教えと振付、それから舞台の演出をやっていく生活の中で、だんだん演出や振付への興味が大きくなっていく。
    「踊れない子が踊れるようになって、人ってこんなに変われるんだ、魅力的に見えるんだって、そこを引き出すのが好きになって。何もない空間を立体的に肉体の動きだけで見せるもの楽しくなって、どんどん作る作業が好きになってのめり込んでいきましたね。」
     そして大里から認められることになった『DRESS CODE』という舞台演出を手がけることになる。自分のアクターズの教え子のために、共にダンスを踊り続けたVAXのメンバーのために、そして自分自身のために。
    「彼女たちは自分の存在する意味を見つけるために
     ある日は、自分にタイトルをつけ、出かけてみる 
     ある日は、『素敵女の作り方』が書いてある参考書を、読みあさってみる
     ある晩は、泣き疲れた自分の顔を鏡で見ながら、もくもくとお菓子を食べてみる
     ピンと来ない日
     なにかにアセる日
     ホウキしたい日
     でもこれでイイんだと喜ぶ日
     『ミツケタイナ』と願う日々」    『DRESS CODE』のジャケットより

    「スタイルのある演出振付家になる!スタイルのある演出振付家になる!スタイルのある演出振付家になる!・・・・・・・・・」と自分の演出ノート1ページにびっしりと彼女が書き込んだのもこの頃だ。
     そして17から初め10年以上続けたダンサーの道から演出振付家に転身する決心を固め、広島での仕事を辞めて退路絶って拠点を東京に移した。
     アミューズの会長から「東京で勉強しても意味ないから本場に行け」とニューヨークにいきなり放り出されニューヨークの生活を始めた。
    「毎日いろんな舞台を観たけど、どうしても最後のスタンディングオベーションでいつも泣いちゃうんです。なんだかその舞台に賭けてきた想いや苦労が伝わってきたし、自分の小ささを痛いほど感じた。同時に自分ももっとできるはず!って悔しかったりもして。」(MIKIKO)

     ニューヨークからビデオにダビングしてダンスの振付を日本のもう一つの鼓動であるPerfumeの3人に送り続けた。振付だけが自分のメッセージの全てだという風に。
    『チョコレイト・ディスコ』、『Twinkle snow Powdery snow』そして『ポリリズム』

     Perfumeのマネージャーのもっさんはいう。
    「Perfumeはライブハウスで少しずつお客さんを増やしてきてO.Westでやってアストロホール、FAB、ユニット、リキッドルーム、AXってあがっていってる。
    やってることがロックバンドじゃないですか。すげぇと思うですよ。
    だからそれを永遠に続けたいし、僕もそこだけはつぶさないように、そこだけはちょっとがんばろうかなと思います。」

     ほんの少しの 僕の気持ちが
     キミに伝わる そう信じてる
     とても大事な キミの想いは
     無駄にならない 世界は廻る
     ほんの少しの 僕の気持ちも
     巡り巡るよ

    何か思い悩むことがあったとしても胸に手をあて自分の鼓動に聴き、自分のリズムを一身に刻み続ければ、たとえ何度失敗したとして、いつかまた巡り合うことができるのだ。

    生きろ

     響き合う鼓動の歌、それがポリリズムだ。
     そしてポリリズムこそがPerfumeという運動体の歌なのだ。

    スポンサーサイト



    2012.12.29 | コメント(7) | トラックバック(0) | Perfume

    «  | ホーム |  »

    プロフィール

    ノッチ森永

    Author:ノッチ森永

    カレンダー

    11 | 2012/12 | 01
    - - - - - - 1
    2 3 4 5 6 7 8
    9 10 11 12 13 14 15
    16 17 18 19 20 21 22
    23 24 25 26 27 28 29
    30 31 - - - - -

    つべこべ

    アクセスランキング

    [ジャンルランキング]
    音楽
    2064位
    アクセスランキングを見る>>

    [サブジャンルランキング]
    動画
    28位
    アクセスランキングを見る>>

    つべこべON

    現在の閲覧者数:

    検索フォーム

    ブロとも申請フォーム

    この人とブロともになる

    QRコード

    QR